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第3話 変化の兆し

مؤلف: 青砥尭杜
last update تاريخ النشر: 2025-01-21 10:57:21

 マジェスタはカイトを落ち着かせようとする気遣いを柔和な表情に滲ませてみせた。

「貴殿の困惑は至極当然でございます。ですが、失礼を承知の上で早急に確認させていただきたい点が一点だけございます」

 カイトは眉根を寄せて露骨に警戒を表わしながらも、

「確認したい点とは、なんでしょうか?」

 とマジェスタに対して「話は聞く」というスタンスで応じた。

「私どもに、付いてきていただけますか?」

「……どこへ行くんですか?」

 不審を隠さずに聞き返したカイトに対し、柔和な表情を崩さないマジェスタが端的に即答した。

「病院でございます」

 マジェスタの口から出た「病院」という意外な単語にカイトは片眉を上げてみせた。

「……病院、ですか? 俺の身体検査……いや、検疫の必要でも?」

 この状況で検疫に考えが及ぶカイトの思慮に満足したマジェスタは、微笑を浮かべてから首を横に振った。

「いえ、検疫の必要はございません。貴殿に治癒魔法の行使を試していただきたいのです」

 治癒魔法というファンタジーな言葉に触れたカイトは素直な反応をみせた。

「治癒魔法? 待ってください。魔法なんて使えませんよ、俺は」

「召喚は成功しております。こうして会話が成り立っているのが証左でございます。ならば治癒魔法も使えるはずなのです」

 すかさず答えたマジェスタの断定する口調に対し、カイトは困惑を隠せなかった。

(召喚があるファンタジーな異世界だ。そりゃあ治癒魔法だって存在しても……いや、治癒とか蘇生なんかに関する魔法はその世界の設定に直結するってのが異世界ファンタジーのお約束だ。ここは慎重に確認しとくべきだな……ラノベを好きだったのが意外と役に立つかもしれない……待て、俺はこんな状況でここまで冷静に考察できるほど順応性が高かったか? これも俺の身に起きた変化のうちってことか……?)

 考えを巡らせていたカイトは、何気なく視線を動かしたタイミングで気付いた。

 カイトは濃紺の軍服を着た青年四人に取り囲まれていた。

 青年四人は燭台が乗った祭壇と同様に、等間隔で四方からカイトに向かって右腕を伸ばし手のひらをかざしていた。

 四人は一様に緊張を露にしており、その表情は敵対というより懇願に近かった。

 状況をすんなり理解したカイトは、ふうと短く嘆息してみせてから、

「どうやら……俺に、拒否権はないようですね」

 と諦観した口調でマジェスタに答えた。

「恐れ入ります。流石は召喚に応じられた御方でございます。理解に即した判断の早さに感服いたします。では、ご案内いたします」

 マジェスタはうやうやしく左手でドアを指し示し、カイトに部屋を出ることを促した。

「……わかりました」

 カイトは小さく首肯して短く答えた。

 またしても音も無くカイトが気付かないうちにドアの前へと移動していた青年が開けたドアから、諦観を顔に浮かべたカイトはゆっくりとした歩調を意識しながら部屋を出た。

 薄暗かった部屋から一変して明るい廊下だった。

 白で統一された壁と天井の廊下には、そこかしこに装飾が施されており「まさに王宮」といった印象をカイトは持った。

 病院というからには城は出るんだろうな……と予想していたカイトは驚いた。

 王宮の中庭と思われる異様に広い庭園の中央に、小さくはない白亜の建物が建っており、それが病院だと聞かされたからだった。

(王宮の中……しかも中央と思われる位置に病院? 変わった配置だな……)

 カイトは驚きを顔に出さないように努めつつ、マジェスタの案内に無言で従った。

 マジェスタに先導されて病院に入ったカイトは、病室だという小学校の教室ほどの広さの部屋に通された。

 鼻を突く消毒薬の刺激臭に微かに混じる、血を思わせる鉄っぽい臭いを嗅ぎ取ったカイトの背筋が緊張でわずかに強張った。

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